それいゆ通信

トマ・ピケティ「21世紀の資本」を少しだけ考えてみる

それいゆ通信074号

関与先の皆さま

 まだまだ寒さが厳しい毎日ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。暦の上では立春(2月4日)を過ぎました。立春は一年の始めとされ、決まり事や季節の節目はこの日が起点になっています。ものの本によると、「梅の花が咲き始め、徐々に暖かくなり、春の始まりとなる」、と言われていますが、現在、当事務所の窓の外は雪が降っております。ただ、このところ日が長くなってきており、やはり春は確実に近づいているのでしょう。今年は1月初旬からインフルエンザの流行警報が出ています。風邪予防も含めて、しっかりと手洗い・うがいをし、マスクを装着して2月も頑張っていきましょう。それでは、事務所通信平成27年3月号とともにそれいゆ通信074号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「決算に向けての優遇税制の適用」について解説しています。優遇税制とは、税額控除または特別償却のことです。関与先の皆様が行った従業員の賃上げや設備投資などについて優遇税制が適用される場合があり、上手に活用することで税負担を軽減することができます。本編に掲載されている内容は、平易に解説したものであり、適用要件のすべてを掲載しているものではありませんが、検討される場合は是非当事務所にご相談ください。

 今回のそれいゆ通信では、先日来日したフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」について触れてみたいと思います。この「21世紀の資本」は専門書にもかかわらず、世界全体で累計100万部を超え、昨年12月に日本語版が発売されると5,500円(税別)という価格ながら発行部数は13万部に達しました。では、なぜこれほどまでに話題となっているのでしょうか。
 これまでの経済学では、経済が成長すれば、所得を含めた社会的地位の格差は自然に縮小していくというのが通説でした。しかし、「ピケティ現象」といわれるほどこの著書が注目を集めたのは、ピケティ氏が提唱した一つの数式の力が大きいからです。それは、「資本の収益率(r)は経済成長率(g)を上回る」、つまり「 r > g 」という簡潔な不等式です。言い換えれば、不動産や有価証券などの資産を運用する富裕層が一層豊かになるスピードは、全員が豊かになるスピードより速い、ということを表しています。いわば格差拡大の公式です。この公式に基づき、戦争や一過性の高度成長を除けば「資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」と主張しました。そこで、ピケティ氏はこの格差問題解決の切り札として、富裕層に極端に高い税率をかける累進課税を提唱しています。他の研究者からは、安定成長の先進国では資産運用の収益率が経済成長率を上回ることは珍しくない、という意味からこの主張を肯定的に捉える見方がある一方で、異論も少なくありません。資産は通常、相続による分散が避けられないことや、投資には失敗がつきものであることから、富裕層への高率の資産課税にはなじみません。また、高率の資産課税をせずとも、経済成長は技術革新や女性など新たな働き手の登場によって再び高めることはできるということも挙げられます。確かに、富裕層が高率の所得課税となれば働く意欲を削ぐことにもなるし、高率の資産課税は貯蓄率を下げることにも繋がり、経済そのものの活力を奪う副作用が大きいようにも思えます。このあたりが話題のポイントではないでしょうか。
 民主党はピケティ氏の話を持ち出して景気が低迷・停滞し格差が拡大しているのはアベノミクスのせいだと安倍首相を叩いていますが、そうはいっても、先日の大相撲初場所千秋楽では、結びの一番の白鵬‐鶴竜戦に過去最多61本(1場所全15日間の懸賞総本数も過去最多の1625本)の懸賞が懸かったそうです。大相撲の懸賞本数は企業収益に左右されるため、景気全体を占う上でも注目の値と言われています。このことからすると、年始からすでに好景気の兆しが見えているともいえるのかもしれませんね。(T.N記)

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