それいゆ通信

ACのCM料について

それいゆ通信029号

関与先の皆さま

 こんにちは。だんだん日差しが強くなり、季節は移っていきますが、依然として新聞等では震災と原発、被災した方々や企業についての記事が多く、復興までの道のりが長いことを痛感します。現地でのボランティア活動は難しくても、節電等今この場で出来ることで支援していきましょう。

 今回の事務所通信は、損益分岐点分析について非常にわかりやすい記事があります。取引先から値引きについて相談があった場合、どの程度までなら採算が取れるかどうか、感覚ではなく具体的な数値で判断できるようになるのはとても重要なことです。変動費と固定費という聞きなれない用語での解説ですが、実際には通常の損益計算書の項目の読み換えにすぎません。何度も読んでぜひ理解するように心がけてください。

 今回のそれいゆ通信では、前回の寄附金に関連して、震災後注目されたACジャパンのCM料についての話題提供です。

 皆さんもご存じのように、テレビのCMとは、販売されている時間帯の広告枠をスポンサー企業が購入することで流れるものですが、原則広告枠は日程や時間帯の変更ができない仕組みだそうです。その結果、スポンサー企業がCMを取りやめると、そのままその時間帯に空きがでてしまうという事態になるため、その穴埋めのためにTV局やスポンサー企業が正会員となっているAC(旧公共広告機構)のCMが流れることになります。我々が繰り返し見た震災直後のACのCMはこのような各スポンサー企業の自粛により空いた枠のものでした。
 
 ところが、このようにスポンサー企業が自粛してCMを取り下げたにもかかわらず、現時点ではTV局側からは、広告枠の購入代金(広告宣伝費)はスポンサー企業へ返金されていないようです。スポンサー企業にとってみると、TV局に支払った広告宣伝費が結局自社製品の宣伝ではなくACのCMに使われてしまっているように思えますし、またACも広告枠の利用代金をTV局または自粛したスポンサー企業側へ支払っていないようです。つまり、お金の流れをみる限り、スポンサー企業はACのために広告宣伝費を払っているようですね。そこで、これではスポンサー企業からACに対する寄附に該当するのではないかと疑問が生じるわけですが、みなさんはどのように考えますか?
 
 税法上の見解をお話しましょう。法人税法第37条第7項には、寄附金の額には、経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合などにおける当該経済的な利益の供与時における価額などによるものが含まれているとあります。つまり、直接金銭を渡さなくても、経済的利益の贈与があればそれも寄附金にあたりますというのがこの条文の解釈です。このことから、、ACはスポンサー企業から経済的利益を受けているのではないかを検討する必要があります。

 ところが、今回のACの放送については、スポンサー企業側は震災による自粛で仕方なく流させたものであり、またAC側からみても望んで放映しているわけではなく、また視聴者からも「大量放映でしつこい!」「ACのロゴのメロディが不快だ!」などと多くの苦情を受けたようです。このようなことから、今回の状況は経済的利益の贈与を得たとは言い難いと思えるため、寄附金の額には該当しないと考えられます。

 ちなみに、広告宣伝費も寄附金も企業活動の経費となることは変わりなく、経理上では同じ扱いですが、税務的には大きな違いがあります。というのは、法人税の計算では、寄附金は大半が経費と認められないため、法人税が課税されてしまうからです。とはいえ今回の件は、上記の通り、経理上も税務上も同じく経費と処理できることになります。

 これからますます今回の震災にかかる様々な税制が確定、改正していくことになりますので、当事務所からも情報提供を心がけていきたいと思います。

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