「130万円の壁」が「106万円の壁」へ
2016/07/09
それいゆ通信091号
関与先の皆さま
あっという間に今年も半分を過ぎましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。7月18日は「海の日」ですが、今年から8月11日に「山の日」という祝日が増えました。当初は祝日のない6月に設けようという意見が多かったようですが、ゴールデンウィーク後であることや、連休を取りにくいということもあって、経済効果の観点から8月の制定になったそうです。いよいよ本格的な夏がやってきましたが、熱中症に注意しつつ、暑さに負けずに頑張っていきましょう!それでは、事務所通信平成28年8月号とそれいゆ通信091号をお届けします。
今回の事務所通信は、「貸倒損失」について取り上げています。法人が有する売掛金や貸付金などの金銭債権が回収不能に陥っているかどうかの認定は、その債務者の財務状況や支払い能力など総合的に勘案して判定されますが、貸倒損失の計上を法人の任意としてしまうと租税回避行為につながる可能性が生じます。税務上、貸倒損失として損金算入が認められる態様と注意点、貸し倒れにならないためにやっておくことの記載がありますので、ご一読ください。
自社で労務を行っている場合、社会保険の報酬月額算定基礎届の作成が終わり一段落した頃だと思います。しかし、平成28年10月より社会保険に加入しなければならない「130万円の壁」が「106万円の壁」へと引き下げられることはご存知でしょうか。今回のそれいゆ通信では、社会保険の制度改正について触れたいと思います。
今回の制度改正の背景には、社会保険加入者による恩恵を受けずに働いている人の救済や、女性の社会進出の促進が挙げられます。とはいえ、奥さまがパートで働いているご家庭にとっては、社会保険料を負担する分収入を増やすか、負担しない範囲で働くかは悩ましい問題です。今後の働き方を考えるためにも、制度改正により何が変わるのかをチェックしてみましょう。
まず、収入が106万円以上で社会保険に加入する条件として、①従業員数501名以上の企業で働いている、②勤続年数は1年以上、③週に20時間以上働いている、④月額賃金8.8万円以上、となっています。この4つの条件全てにあてはまるのであれば、社会保険への加入義務が発生します。
次に収入が105万円(106万円の壁)の人と今までの基準であった129万円(130万円の壁)の人を実際に比較すると、105万円の人は社会保険料の負担はなく、所得税・住民税の負担が年間約1万円となり、手取り額は104万円程度、ほぼ稼いだ分をもらえます。月収に直すと8.6万円程度です。一方、129万円の人は、社会保険料の負担が年間約18万円、所得税・住民税の負担が約2万円で、手取り額は109万円程度となります。収入105万円の人と手取り額はほぼ変わらなくなりますが、社会保険料を負担しているので、自分名義での将来受け取れる年金額を増やすことができます。また、収入が141万円未満であれば、配偶者特別控除を受けられるというメリットもあります。さらに別の角度から見ると、将来受け取れる年金額の増加以外にも、被扶養者から被保険者になることで、病気やケガで4日以上連続して休職した場合に傷病手当金をもらうことができます。
社会保険に加入しない程度の収入に抑えるか、加入して目いっぱい働くかは、配偶者の働き方や考え方、お子さまの状況等でも判断が分かれるところかもしれません。社会保険加入にはメリットもたくさんあることを理解したうえで、それぞれのご家庭にあった働き方を検討する必要がありますね。
安倍首相は、デフレ脱却に向けた経済政策として、来年度から年金の受給資格を得るのに必要な保険料の納付期間を現行の25年から10年に短縮する意向を示しました。これにより、国民年金だけでなく、厚生年金も加入しやすくなりました。ただ、10年間保険料を納めただけではもらえる年金額は1.6万円程度にとどまるため、老後の生活保障としては不十分と考えられるので注意が必要です。