「付加価値」と「合理的サービス」の間

「付加価値」と「合理的サービス」の間

それいゆ通信067号

関与先の皆さま

 こんにちは。しばらくすっきりしないお天気でしたが、梅雨も明けそうな気配で、いよいよ夏が近づいてきていますね。また残念ながら日本は予選で敗退してしまいましたが、ワールドカップもそろそろ大詰め、寝不足の日々が続いていませんか。私はそれに加えて、毎年恒例のツールドフランスというサイクルロードレースがあるので、これが始まると夏が来るなぁと実感します。それでは、事務所通信8月号とそれいゆ通信067号をお届けします。

 今回の事務所通信では、税務面において「夏祭りの協賛金等の税務上の処理」を取り上げました。地元の神社や商店街から協賛金や寄附をお願いされることも少なくないと思います。金額を問わず、税務的に注意すべき点がいくつかあります。法人税と消費税のそれぞれ取り扱いについて、今一度ご確認をお願いします。どちらの税目も、その支出に対して宣伝効果があるのかないのかがポイントとなります。ぜひご一読ください。

 今回のそれいゆ通信は、「付加価値」と「合理的サービス」のバランスについて考えてみたいと思います。中小企業の生き残る術として、従来提供してきたサービスや製品に付加価値を付けることで、差別化を図り、同業他社とは異なった視点からマーケットにアプローチしていくというものがあります。毎月皆さんとお会いする中でも、現在の提供内容を見直し、プラスアルファが大きな需要を生む可能性を一緒に検討することも多いので、すでによくご理解いただいていると思います。

 今から見ていくのは、それらとは真逆といえる「必要なものだけを残して徹底的に過剰を排除し、コストを下げる」という内容です。まずすぐに思いつくのは航空サービス分野ではないでしょうか。LCC(ローコストキャリア)航空と呼ばれる格安航空会社です。旅行会社を介さず、直接ネットで予約し、空港でも簡素な設備しかない専用ターミナルを利用し、機内の飲食なども有料です。これは「目的地に着くことだけが唯一の目的で、それ以外のサービスへの余分なコストを削る」というニーズに応えたものですっかり定着しています。

 私も一度LCCを利用しましたが、航空券購入時にオプション料金を省いたため、映画を見ようとスイッチを入れても、目の前のモニターには現在地情報しか流れず、ただひたすら目的地に運ばれていくだけという体験でした。

 最近では格安スマホが話題ですね。イオンやビックカメラが参入しています。通信速度が遅いため、Youtubeなど動画サイトの再生には向かないようですが、メールやSNSを使う分には何ら問題がないそうです。月に3000円以下という低価格がポイントで、毎回販売開始するとすぐに端末が売り切れるほど人気が集まっているようです。

 上記の例はいずれも国や大手企業による規制が堅固だった業界です。これが現代のネットの普及によって余計なサービスを排除できる環境が整って、その結果、合理的サービスへの転換を加速させたと考えられています。変化を迫るその圧倒的な破壊力は今やあらゆる方向に拡散しています。皆さんご存知の楽天では、今年2月KKP(ケチケチプロジェクトの略)を発表し、従来の仕事内容を見直し、上記を含めた様々な合理化サービスに切り替えることで膨大なコスト削減を達成できたと報告しています。

 いまやインターネットやスマートフォンの普及と、価値観の多様化により「合理的サービス」を望む声は一段と高まっており、我々の生活が大きく変化する分岐点に差し掛かっているように思います。安くても高品質で高性能なサービスが増えて、消費者が自分のライフスタイルを反映して、自由に選択できる時代となっています。中小企業の経営も、この時代の流れを踏まえて、付加価値だけを追求するのではなく、合理的サービスという視点を加え新製品や新サービスを作り出していくという考え方に転換すべき時なのかもしれません。

 皆さまはどのようにお考えになりましたか。