タックスヘイブン
2013/07/05
それいゆ通信055号
関与先の皆さま
今回のそれいゆ通信は、「タックスヘイブン」を取り上げます。既にご存じの方も多いと思いますが、「タックスヘイブン」とは、法人税などの税率を意図的に低くしている国や地域のことで、代表的なのは、カリブ海の英領ケイマン諸島やモナコ、香港などです。企業は、実体のないペーパーカンパニーや銀行口座を作って、資産や所得をこれらの国へ移すことによって、法人税の支払額を減らしています。これがいわゆる「課税逃れ」や「租税回避」と言われるものです。
最近明らかになったアップルの租税回避戦略の1つが、アイルランドを利用した仕組みで、簡単にいうと、アップル本社のある米国と子会社を設置したアイルランドの課税対象の違いを抜け穴として使ったものです。米国は、設立地が米国内の企業に対して課税し、アイルランドはアイルランド国内に経営機能がある企業に課税するという税制になっています。そこで、アップルがアイルランドに設立した子会社は、米国に経営実態を置く形にすれば、その子会社の利益にはどちらの国からも課税されないことになります。アップルは、アイルランドに世界中で稼いだ利益を集約させることで、グループ全体の実効税率はかなり低く抑え、税負担を免れていたと批判されています。同様に、スターバックスはオランダの低税率を利用することで、ヨーロッパの拠点がある英国にほとんど納税していなかったということで、デモや不買運動が起こったのも記憶に新しいところです。
税負担を軽減する行為というのは3つあります。1つは誰でも行う「節税」で、法律自体が認めている行為で、一方、法律の範囲を逸脱した行為が「脱税」となります。上記のアップルやスターバックスは、この2つの中間での「租税回避」と呼ばれるもので、倫理を逸脱した異常な節税行為ですが、ただ違法ではないため、各国とも課税したくても課税するのが現状では難しいとされています。
企業には、最大限の利潤を追求するという株主に対する責任があり、利益を上げて雇用を生み出し、社会に貢献するという大命題もあります。そのため、行き過ぎた節税に対しても企業活動の一環である、税金をコストとすればそれを削減するのは企業倫理として間違っていない、という考え方もあると思います。一方、本来納めるべき税金を納めていないということは、その企業以外の企業や一般市民が納めた税金で提供されるインフラや行政サービスをただ同然で使っているという批判も生んでいます。納めるべき税金を納めてもらっていれば、国は財政難を避けられたかもしれない、その結果、医療や教育など行政サービスももっと手厚くなっていたかもしれないという主張で、グローバル企業の節税対策には今や厳しい視線が注がれているようです。
ただ、先進国と新興国、低税率国とそうでない国々で、それぞれの利害が交錯して、対策がまとまらないのが現状のようです。企業倫理と納税意識、皆さんはこのタックスヘイブンの問題をどのようにお考えでしょうか。