軽減税率制度ってどんな制度?
2015/10/05
それいゆ通信082号
関与先の皆さま
こんにちは。だんだんと涼しくなり、先日まで青々としていた当事務所前の桜並木も黄色い葉が目立つようになりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。ご存じのとおり、いよいよ今月、マイナンバー制度における「通知カード」が郵送配布されます。通知カードは、10月5日現在の住民票の住所地に簡易書留で郵送されますので、番号収集へ向けて従業員への周知をお願いします。それでは、事務所通信平成27年11月号とともにそれいゆ通信082号をお届けします。
今回の事務所通信は、「保険料控除申告書を作成するための生命保険料控除記載の注意点」を取り上げています。年末調整により生命保険控除を受けるには、10月下旬頃に保険会社等から各従業員に届いた「保険料控除証明書等」の「原本」が必要です。保険料控除証明書等を紛失しないよう従業員への注意喚起をお願いします。さらに、生命保険の種類と新旧区分、保険金等の受取人の氏名や続柄などの記載、正確な控除額(1年分の控除額)の計算について注意点がありますのでご一読ください。
また、マイナンバーの記載が必要となる「扶養控除等(異動)申告書」についての記載もありますので、併せてご一読ください。
今回のそれいゆ通信は、先月初旬にマイナンバーカードと結びつけて還付すると話題になり、結局取りやめになった迷走中の「軽減税率制度」を取り上げます。そもそも軽減税率制度とは、消費税率が8%から10%に引き上げられた際に消費者の負担増を抑えるためのもので、特定の物(生活必需品)やサービスに限って、標準より低い税率を課す仕組みです。同じ税目でも税率が複数あるので、複数税率制度とも呼ばれています。給与などに課される所得税は、所得の水準に応じて税率が定められています。これに対し、消費税は所得にかかわらず、同じ金額の物を買ったり、サービスを受けたりすれば、誰もが同じ税額を負担しなければなりません。つまり消費税率が上がると、所得が低い人は生活が厳しくなるわけです。贅沢品を買うのは我慢できても、食料品など毎日の暮らしに必要な物を買い控えることはなかなか難しいですよね。さらに、所得が低い人は、生活必需品の支出の割合が高い傾向があり、増税の負担はより重く圧し掛かっていきます。こうした問題の改善策として世界で広く採用されているのが軽減税率制度です。
例えば、毎月5万円、年間60万円の飲食料品を購入する世帯では、消費税率10%なら税額は年間6万円に上りますが、8%の軽減税率が適用されたとすると4万8000円に下がり、差し引き1万2000円の負担軽減になります。これまで消費税率が引き上げられるたびに人々の財布の紐が固くなり、景気は悪くなっていきました。消費が振るわなければ企業の業績は悪化し、賃金が減って税収も落ち込むという悪循環に陥りかねません。生活に必要な物の消費税率が軽減されると、人々は安心でき、消費の落ち込みを防ぐ効果が期待できるというわけです。
そうなると次は、対象品目をどうするかが問題となります。これは全てが政治にかかっているといっても過言ではありません。今のところは「酒類を除いた飲食料品」が軽減税率の対象となりそうですが、世界各国では、食料品、公共交通機関の運賃、子供服、医薬品、新聞・書籍など活字文化の媒体、美術館や動物園の入場料など、単に生活必需品だけでなく、文化の保護などの目的にも活用され、幅広い分野に及んでいます。この点は、今後の議論が待たれるところです。
繰り返しになりますが、10月中旬には世帯ごとに簡易書留で「通知カード」が届きます。個人番号カード(マイナンバーカード)と違い、紙のカードですので、従業員に紛失しないよう注意喚起をお願いします。また、「平成28年分の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう場合に、従業員の本人確認と、従業員本人とその扶養家族のマイナンバーを扶養控除等申告書に記載してもらうことになりますので、その点の注意喚起も併せてお願いします。(T.N記)