楽器に関税?!
2013/09/07
それいゆ通信057号
関与先の皆さま
今回のそれいゆ通信は、「関税」についてです。普段おなじみの税金には、法人税、消費税や相続税などの国税がありますが、それ以外に国への税目として「関税」があります。関税とは、自国の産業を守るために、他国からの輸入品に税金を掛けて簡単に輸入品が売れてしまわないようにする税のことで、関税を含めた輸出入にかかる手続きである通関業務は、主に通関士と呼ばれる有資格者が手掛けています。
昨今話題のTPPは、この関税を撤廃することによる、貿易の自由化と経済発展を目的としているのはご存じのとおりです。また、メリット・デメリットは、それぞれの業界からの視点により異なりますが、一般的には、貿易の自由化が進むことで、障壁がなくなり、日本製品の輸出額が増大し、GDPや国民所得が増加していくといわれているところです。
その一方で海外の安価な商品が流入することによってデフレを引き起こす可能性があります。特に農業では、関税が撤廃されると、アメリカから安い農作物(特にお米)が入ってくるため、大きなダメージを受けると想定されています。また貿易の円滑化だけでなく政策面でも、医療サービス、医療保険が自由化し、混合診療が解禁されれば、日本の社会保障の根幹ともいえる国民皆保険制度が揺らぎ、医療格差が広がる懸念もあります。日本政府はまだまだ交渉の入り口に立ったような状況のようですが、私たちの生活にも深くかかわってくるTPPの問題は目が離せないものとなりそうです。
そんな渦中の「関税」について、より重要な税目として扱われているという例をご紹介しましょう。昨年、ベルギー在住の日本人バイオリニストのバイオリンが、ドイツの空港の税関に没収されたのを覚えている方も多いかもしれません。バイオリン評価額100万ユーロ(約1億3000万円)に対して税率19%の関税で、19万ユーロ(約2500万円)も要求されたという報道がありました。最終的には無償で返還されたようですが、そもそもこれは、ドイツの税関が著しく厳しい(国内経済が窮境のため、法人税等の税収では賄えず、関税も重要な財源)ということを認識していなかったために、通関に必要な書類や証明書(要は国内販売用の楽器ではないという証明)の提出を怠ったというのが原因だそうです。
従来、演奏家の楽器は無審査が慣例だったそうですが、経済不況で自国の産業を守るために、また何より税収を確保するために、税関が取り調べを強化したというのが真相のようです。いまや世界中の各国は、税に対する見方がシビアになってきているように思います。以前掲載したタックスヘイブン、租税回避問題もG20の重要検討課題のようです。私たちも今一度、納税や税収の使われ方などを意識してみましょう。