配偶者控除の見直しについて

配偶者控除の見直しについて

それいゆ通信066号

関与先の皆さま

 こんにちは。例年よりも早く、関東は梅雨入りが発表されました。ここ数日は特に集中的な豪雨で、交通機関にも影響が出ているようです。またこの時期は、蒸し暑さ対策にも苦労しますね。今年は例年以上に、雨グッズが種類も多く店頭に並んでいます。少しでも快適に過ごせるように工夫したいですね。それでは、事務所通信7月号とそれいゆ通信066号をお届けします。

 
 今回の事務所通信では、「自社で記帳する」ことの基本である現金管理を取り上げています。一般に、企業において記帳対象となる会計取引の大半は、現金預金の出納取引です。このうち現金取引は、その都度、入出金を記録しておかないと、後で正確な現金の動きを把握できなくなってしまいます。ほんの数日前のことなのにどうしても思い出せない!ということがありますよね。①現金の入出金を正確に記録し、②日々の現金の実際残高と帳簿残高が一致することを確かめ、③一致した帳簿残高を翌期に繰り越すこと、をきちんと遅れずにできるように心がけてみてください。

 
 今回のそれいゆ通信は、最近その見直しが話題になる「配偶者控除」を取り上げてみたいと思います。配偶者控除の基本的な説明としては、所得税というのは、所得自体に課税するものではなく、所得を得た人に課税する、つまり配偶者を養っているAさんと独身のBさんを比べると、税を払う力はAさんの方が弱いと考えてAさんの税負担を軽くするべき、そのために基礎控除を配偶者の分も上乗せして控除を多くする方法というように考えられます。
 

 
 ところがご存じの通り、この配偶者控除は妻の所得が38万円超、例えばパートの収入が基礎控除と給与所得控除の合計である103万円を超えると適用されなくなってしまいます。そのため、世帯全体の手取りが減るのを恐れて、パート主婦が働くのを控えるようになる「103万円の壁」があるといわれています。主に2つ理由があって、1つ目は企業の配偶者手当の要件が所得税法上の配偶者控除に合せて103万円以内となっているが多いことで、その場合、年収110万円だと確かに夫の手取りが減ってしまいます。もう1つには、103万円を超えると妻にも所得税がかかってしまうからという点がありますが、これは大きな誤解で、103万円を超えた分に課税されるだけなので、103万円の時より手取りが減ることはありません。もし年収110万円になったら、増えた7万円の分にだけ所得税がかかるということです。ただし、「103万円の壁」の次の「130万円の壁」、こちらは社会保険に関係するもので、超えてしまうと妻が自分で社会保険を負担することになるため、家計が大幅に変わる可能性があります。
 

 最近、この配偶者控除の見直しとして、「家族控除」という制度を耳にしますが、こちらは夫婦それぞれの基礎控除38万円を合わせた76万円を、妻の収入に関わらず夫婦の控除額とする仕組みです。今の制度では、妻の年収によっては控除の合計が76万円より大きくなっているケースがあるので、その場合は負担が増えます。

 具体的には、妻の年収が65万円超141万未満のケースが該当することになります。現行の制度で使えている「基礎控除」2名分プラス「配偶者控除」という夫婦合計114万円の控除が、改正されると76万円に減ってしまうため、その分税負担が増える見込みです。ただ、このように妻の所得が低いうちは優遇されているとされる控除の重複が改められるため、制度としては公平になるといえるのではないでしょうか。

 配偶者控除を改めることによって女性のさらなる社会進出が促進されると政府は主張していますが、控除の問題だけを切り取って議論しても、女性が働くようになるとはあまり思えません。皆さまはどのように思われますでしょうか。今後も様々な改正や新制度が俎上に載ってくると思います。日本全体が良くなっていくためには、まだまだ課題が多そうですね。