「限定正社員」制度の創設
2013/08/06
それいゆ通信056号
関与先の皆さま
今回のそれいゆ通信は、アベノミクス3本の矢、雇用分野における規制改革の1つである「限定正社員」制度の創設を考えていきましょう。「限定正社員」は「ジョブ型正社員」と呼ばれたりもしているようです。
この新制度の創設には、今年改正された労働契約法による有期労働契約の新ルール発足があります。新ルールのポイントは、①有期労働契約の期間は更新を含めて最大5年まで、②通算5年を超える有期労働契約が締結されたときから無期契約への転換申し込みの権利が付与される、というものです。この②によって、将来、有期労働契約を無期へ転換制度を構築する必要が生まれ、その結果「正社員でない無期労働契約」形態としての「限定正社員」というものがクローズアップされることになったようです。
それでは、いわゆる「正社員」と「限定正社員」の違いはなんでしょうか。通常の正社員は、労働契約の期間がなく(無期)、転勤や職種変更、時間外労働があるのが前提です。一方、限定正社員は、労働契約の期間がないのは同じですが、勤務地や職種、労働時間のいずれか(又は複数)が限定されているということになります。
この限定正社員制度は、政府は2014年度をめどに法整備を目指していますが、この制度によりどんな影響が考えられるでしょうか。メリットとしては、非正社員の雇用が安定するのではないでしょうか。従業員の中には、雇用の安定(無期契約)を希望しても、転勤や職種変更を望まない人もいるはずなので、そのような働き方にも合う制度だといえます。また労働条件が限定されることで、子育てや介護というライフサイクルに応じた勤務環境が整備され、女性にもさらに就業の機会が拡大するように思われます。
問題点としては、従業員を雇用する企業の立場から、就業規則や労働契約で、今までなかった限定正社員という位置づけを明確にすることができず、あいまいなまま運用されてしまう恐れも指摘されています。勤務地限定の労働契約の場合、様々な事情で勤務先の事業所が閉鎖された場合、容易に解雇の対象になりかねません。雇用主には、より一層の就業規則や労働契約のルールの明文化が求められることになるといえるでしょう。労働条件通知書(雇用契約書)に職務内容や勤務場所を明記することは今後必須となりそうです。
いずれにしても、雇用と解雇については、労働契約法によって厳格なルール(解雇権乱用の法理といいます)があるので、経営者としては、雇用についての責任、解雇については客観的な合理性や社会的相当性が求められることを意識しておくことが大切になります。
今の小学生の60%は、今はまだ存在しない職業につく可能性が高いといわれていますが、現代社会においては、働く意識や働き方も様々になって複雑化しています。企業は、そのような多様性に着実に対応していくことが不可欠となりそうですね。ぜひこの機会に、自社の労働環境、就業規則等について見直してみてはいかがでしょうか。