年金課税のあれこれ

年金課税のあれこれ

それいゆ通信087号

関与先の皆さま

 このところ気温の高い日が続き、急に春めいてまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。暖かくなり過ごしやすくなるのは良いのですが、花粉症の私は憂鬱なシーズン到来といったところです。このそれいゆ通信もティッシュを抱えながら書いております。それでは、事務所通信平成28年4月号とそれいゆ通信087号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「役員給与の税務と注意点」を取り上げています。役員給与の「定期同額給与」については、事業年度開始から3カ月以内でなければ支給額を改定できないということは定着してきていますが、たとえ減額であっても、原則として期中の改定は認められません。また、家族役員・社員の給与については、近年、税務調査でのチェックが厳しくなっていますので、勤務実態と支給額が見合っているかについての記録をきちんと残しておくことが肝要です。勤務実態の証明に役立つ主な書類については本文中に記載がありますので、併せてご確認をお願いします。

 今回のそれいゆ通信では、政府税制調査会で議論されている「公的年金の課税見直し」について触れたいと思います。巡回監査で皆様のところへお伺いすると、年金を受給しながら働いている方からも相談を受けますし、現役世代の方からはご両親の話として相談を受けることもある公的年金制度。今回は年金受給者がどのように優遇されているのかという「現役世代の給与所得者との課税の差」、「働く高齢者との課税の差」、「受け取れる年金による高齢者間の課税の差」をご説明します。
 年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金)は、基本的には所得税や住民税の課税対象になります。しかし、年金には公的年金等控除が適用され、その控除部分には税金は課されません。65歳以上の場合、控除の最低保障額は年120万円で、年金額が多い人は控除額の増える仕組みになっています。他方、会社員の給与にも、年収に応じた給与所得控除が適用されます。こちらは、最低保障額は年65万円で、公的年金等控除より小さくなっています。財務省の試算によると、夫婦で暮らす会社員は、社会保険料控除も含めると年収168.8万円を超えた場合に所得税を課税されます。しかし、夫婦で暮らす年金受給者は、収入がそれより39.2万円多い208万円まで課税されません。これが「現役世代の給与所得者との課税の差」です。
 次に、年々、高齢化が進み、年金を受給しながら働く人が増えています。この場合、年金に公的年金等控除、給与に給与所得控除がそれぞれ適用され、一人で両方の控除を使うことができます。また、所得税は収入から公的年金等控除や給与所得控除などを差し引いた上で税率を掛けて税額が決まります。この税率は課税される所得に応じて5~45%で、高い税率が適用される高所得の人ほど、控除の効果で軽減される税額が大きくなります。これが「働く高齢者との課税の差」を生み出しています。
 最後は「受け取れる年金による高齢者間の課税の差」です。一家の生計を支える人がなくなると残された家族に遺族年金が支給されます。通常の年金は一定以上の収入だと課税されますが、遺族年金はそもそも非課税扱いです。例えば、ずっと独身で働き、厚生年金と基礎年金を合わせて年190万円を受給する人は、年金受給者単身世帯の課税最低限(財務省試算で163.4万円)を超える部分について所得税が課税されます。しかし、ずっと専業主婦で夫に先立たれ一人暮らしで夫の遺族年金120万円を受け取り、自分の基礎年金70万円も受け取っている人は、合計額は単身世帯の190万円の人と変わらないのに、遺族年金は非課税で、基礎年金は課税最低限の範囲内なので所得税を納めなくて済みます。
 さらに厚生労働省によると、高齢者の約6割は所得税も住民税も納めていないとの推計があります。これだけ聞くと、優遇されている高齢者にはもっと税負担を求めるべきという声が上がりそうですよね。しかしそれだけでよいのでしょうか。確かに私から見ると大先輩の高齢者を優遇するというのも当然ではあると思いますが、「高齢者だから」というだけの優遇だけでなく、年齢にかかわらず本当に必要な人を重点的に支援するような仕組みづくりこそ、今の日本に必要なのかもしれませんね。