年金課税のあれこれ

年金課税のあれこれ

それいゆ通信087号

関与先の皆さま

 このところ気温の高い日が続き、急に春めいてまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。暖かくなり過ごしやすくなるのは良いのですが、花粉症の私は憂鬱なシーズン到来といったところです。このそれいゆ通信もティッシュを抱えながら書いております。それでは、事務所通信平成28年4月号とそれいゆ通信087号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「役員給与の税務と注意点」を取り上げています。役員給与の「定期同額給与」については、事業年度開始から3カ月以内でなければ支給額を改定できないということは定着してきていますが、たとえ減額であっても、原則として期中の改定は認められません。また、家族役員・社員の給与については、近年、税務調査でのチェックが厳しくなっていますので、勤務実態と支給額が見合っているかについての記録をきちんと残しておくことが肝要です。勤務実態の証明に役立つ主な書類については本文中に記載がありますので、併せてご確認をお願いします。

 今回のそれいゆ通信では、政府税制調査会で議論されている「公的年金の課税見直し」について触れたいと思います。巡回監査で皆様のところへお伺いすると、年金を受給しながら働いている方からも相談を受けますし、現役世代の方からはご両親の話として相談を受けることもある公的年金制度。今回は年金受給者がどのように優遇されているのかという「現役世代の給与所得者との課税の差」、「働く高齢者との課税の差」、「受け取れる年金による高齢者間の課税の差」をご説明します。
 年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金)は、基本的には所得税や住民税の課税対象になります。しかし、年金には公的年金等控除が適用され、その控除部分には税金は課されません。65歳以上の場合、控除の最低保障額は年120万円で、年金額が多い人は控除額の増える仕組みになっています。他方、会社員の給与にも、年収に応じた給与所得控除が適用されます。こちらは、最低保障額は年65万円で、公的年金等控除より小さくなっています。財務省の試算によると、夫婦で暮らす会社員は、社会保険料控除も含めると年収168.8万円を超えた場合に所得税を課税されます。しかし、夫婦で暮らす年金受給者は、収入がそれより39.2万円多い208万円まで課税されません。これが「現役世代の給与所得者との課税の差」です。
 次に、年々、高齢化が進み、年金を受給しながら働く人が増えています。この場合、年金に公的年金等控除、給与に給与所得控除がそれぞれ適用され、一人で両方の控除を使うことができます。また、所得税は収入から公的年金等控除や給与所得控除などを差し引いた上で税率を掛けて税額が決まります。この税率は課税される所得に応じて5~45%で、高い税率が適用される高所得の人ほど、控除の効果で軽減される税額が大きくなります。これが「働く高齢者との課税の差」を生み出しています。
 最後は「受け取れる年金による高齢者間の課税の差」です。一家の生計を支える人がなくなると残された家族に遺族年金が支給されます。通常の年金は一定以上の収入だと課税されますが、遺族年金はそもそも非課税扱いです。例えば、ずっと独身で働き、厚生年金と基礎年金を合わせて年190万円を受給する人は、年金受給者単身世帯の課税最低限(財務省試算で163.4万円)を超える部分について所得税が課税されます。しかし、ずっと専業主婦で夫に先立たれ一人暮らしで夫の遺族年金120万円を受け取り、自分の基礎年金70万円も受け取っている人は、合計額は単身世帯の190万円の人と変わらないのに、遺族年金は非課税で、基礎年金は課税最低限の範囲内なので所得税を納めなくて済みます。
 さらに厚生労働省によると、高齢者の約6割は所得税も住民税も納めていないとの推計があります。これだけ聞くと、優遇されている高齢者にはもっと税負担を求めるべきという声が上がりそうですよね。しかしそれだけでよいのでしょうか。確かに私から見ると大先輩の高齢者を優遇するというのも当然ではあると思いますが、「高齢者だから」というだけの優遇だけでなく、年齢にかかわらず本当に必要な人を重点的に支援するような仕組みづくりこそ、今の日本に必要なのかもしれませんね。

マイナス金利発動!

マイナス金利発動!

それいゆ通信086号

関与先の皆さま

 早2月となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。まだまだ寒い日が続いておりますが、立春も過ぎ、徐々に日脚が伸びてきて春に向けての準備が進んでいる気がします。今シーズンはインフルエンザの流行が遅れているようで、これからピークを迎えるそうです。2月16日(火)からは確定申告が始まり、多くの関与先様が3月に決算を迎えられ、忙しい時期となりますので、しっかりと手洗い・うがいをし、インフルエンザ予防をしましょう。それでは、事務所通信平成28年3月号とそれいゆ通信086号をお届けします。

 今回の事務所通信は、3月に決算を迎える企業も多いため、『決算期をまたぐ売上計上等の「期ズレ」に注意しよう』と題して、決算のための確認事項を解説しています。期ズレとは、売上取引が決算日をまたいで行われたときに、売上計上の誤りが起こることをいいます。今期に計上すべき売上等が来期に計上されてしまうと法人税額に影響するため、期ズレは税務調査においても厳しくチェックされるところです。また、売上以外にも決算日前後に発生する経費についても注意点があります。ご一読いただき、不明点は、お気軽にご質問ください。

 今回のそれいゆ通信では、1月28‐29日に開かれた日銀の金融政策決定会合で決定した「マイナス金利」を取り上げます。これまで実施してきた量的緩和策に加えて、金融機関から預かっている当座預金の一部に対してマイナス金利を付与するということですが、一体どのような仕組みなのでしょうか。
 通常、金融機関にお金を預けると一定の利子(金利)を受け取ることができます。しかし、「マイナス金利」では、お金を預けると逆に利子を取られることとなり預金の手数料を支払うような形となります。そうなると心配なのは、私たちが金融機関に預けた預金はどうなるかということになりますよね。今回、日銀の決定したマイナス金利では、金融機関に預けている一般的な預金についてはマイナス金利の適用はありません。マイナス金利が適用されるのは、金融機関が日銀に預けているお金の一部です。金融機関は、万一の預金の払い戻しなどに備えて、日銀に一定のお金を預けることが法律で義務付けられています。今まで日銀は、義務付けの範囲を超えて金融機関が日銀に預けているお金に年0.1%の利子を付けていましたが、2月16日から、このお金の一部にマイナス0.1%の金利を適用することになりました。これは金融機関に対してお金を余らせないようにする措置といえます。それでは日銀は、どうしてそのようなことをするのでしょうか。これまで日銀は、世の中に出回るお金の量を増やして、個人や企業がお金を借りやすくすることで消費や投資を活性化させ、それによって物価を押し上げてデフレ脱却を実現しようとしてきました。しかし、これまでは0.1%の利子が付くので日銀がいくらお金の量を増やしてもその多くが日銀への預金に回っていましたが、これからは日銀にお金を預けると、一部はマイナス金利によって手数料を支払わなければならなくなります。そうなると金融機関は手数料を支払いたくないので、日銀に預金をせず、必然的に世の中に出回るお金の量が増えるということになります。
 では、世の中のお金の量が増えると、私たち個人や企業にとってどのような影響があるのでしょうか。良い影響として、個人は、住宅ローンや自動車ローンなど金融機関からお金を借りる際の金利引き下げで購入がしやすくなります。同様に、企業も金融機関からの借入金の金利負担が軽減されます。一方、悪い影響としては、個人が金融機関に預けている定期預金や普通預金の金利が低下し、生命保険会社の運用利回り悪化の影響も受けて保険料の値上げも予想されます。そして、企業は、金融機関の金利収入減少による業績悪化の影響を受け、資金調達が難しくなる恐れがあります。
 当事務所にとっては、身近な存在の日銀(場所的に)。様々な金融政策を駆使して、景気にも早く立春が到来してほしいですね。

平成28年主要トピック(独断と偏見を含みます)

平成28年主要トピック(独断と偏見を含みます)

それいゆ通信085号

関与先の皆さま

 
 あけましておめでとうございます。年末年始はいかがお過ごしでしたか。今年はお正月休みが短く不満を口にする人が多かったとも聞いています。また、5日ごろまで1月とは思えない春のような陽気となり、京都・北野天満宮では早咲きの梅が例年よりも早く咲き始め、梅苑の公開を前倒しにすることも検討されているようです。こうも暖かいと反動で大雪が降るのではないかと心配になります。寒暖の激しい不安定な気候が続きそうですので、皆様くれぐれもお体にはお気を付け下さい。それでは、事務所通信平成28年2月号とそれいゆ通信085号をお届けします。

 今回の事務所通信は、3月に決算を控えた企業も多いことから、「黒字決算に向けた決算対策」と題して、「利益確保対策」、「来期につながる節税対策」の対策例を挙げながら解説しています。決算対策というと、黒字企業の節税対策と考えられがちですが、当期の目標とした利益を計上できるように、決算前に講じる様々な対策を指します。まずは、期首から現在までの自社の業績について、売上高、経費、利益など項目ごとに決算数値を予測し、赤字決算なのか、黒字決算なのかを把握します。いずれにしても、税法等の法律の範囲内で合法的に行うことになりますが、赤字の見通しであれば、今からでも可能な利益確保対策を、黒字の見通しであれば、来期以降の業績につながる有効な節税対策を検討しましょう。
また、マイナンバー制度が始まり、マイナンバーが必要となる届出の種類と時期の解説もありますので、ご確認をお願いします。 

 今回のそれいゆ通信では、平成28年の主要トピックを取り上げたいと思います。独断と偏見もありますが参考程度にどうぞ。

1月1日 マイナンバー制度開始
 昨年末、配布、未発行、収集と様々な混乱を巻き起こしたマイナンバー制度がいよいよスタートしました。今後、各種届出、申請に必要となる場合がありますので、当事務所からも逐一情報を発信していきます。

2月中旬 東京都大田区で民泊がスタート
民泊は、文字通り「民家に泊まる」ことで、宿泊料を受け取る営業が常態化すると旅館業法での規制を受けます。しかし、国家戦略特区の特例を受けると旅館業法の適用除外となります。大田区では民泊条例を制定、1月末に施行され、早ければ2月中旬にスタートします。果たして民泊は定着するのでしょうか。

2月27日 スーパーラグビー開幕
 昨年のW杯で大人気となったラグビー。その世界最高峰の国際リーグ戦「スーパーラグビー」に日本チーム「サンウルブズ」が初参戦。面白いことにあの五郎丸選手がオーストラリア「レッズ」に所属することになり、日本チームの敵としてプレーします。残念ながらサンウルブズとレッズの対戦は1戦だけですが、日本W杯に向けて見どころ満載です。

3月26日 北海道新幹線開業
 昨年3月の北陸新幹線に続き、北海道新幹線(新青森~新函館北斗)が開業します。この路線は距離に換算すると全国で最も割高な路線と言われていますが、北陸新幹線のような経済効果が期待できるのかが見ものです。

4月1日 一般家庭向けの電力自由化が解禁
 4月1日から一般家庭でも電力自由化により、各居住者が独自に電力会社を選べるようになります。料金の引き下げだけでなく、新サービスも始まるようで、各事業者がどのようなメニューを提示してくるか気になります。

5月26、27日 伊勢志摩サミット開催
 三重県志摩市賢島で開催されます。賢島は四方を水に囲まれた狭隘な島ですが、とても風光明媚な島だそうです。四方を水に囲まれているというのは警備上もよさそうですね。前回の日本でのサミット、洞爺湖サミットでは自由な貿易、食糧安全保障、テロ対策が議題に上がりましたが、今回はどのような議題が出てくるのでしょうか。

6月19日 選挙権年齢が18歳に引き下げ
 公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、6月19日施行されます。早ければ7月に予定されている参議院選挙から投票が可能となります。今まで20歳で突然与えられていた選挙権も、年齢を18歳に引き下げたことで、高校生が授業で学べるようになっているそうなので、日本の未来も明るくなりそうな予感です。

8月5日 リオデジャネイロ オリンピック・パラリンピック開幕
 日本では新国立競技場問題として名高いオリンピックがいよいよ開幕です。リオオリンピックでは7人制ラグビーとゴルフが新競技として加わります。7人制ラグビーは前出のラグビーと違い試合時間は7分ハーフ。人数も少なくスピード感があるので見やすく面白いですよ。ゴルフは各国の有名選手が出るとの噂でそれも楽しみです。

8月11日 国民の祝日、山の日が誕生
 ついに8月に祝日が誕生します。11日に制定したという山に関する特別な出来事などの明確な由来はないそうですが、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨として制定されました。8月といえば富士登山ですね。未登頂の方はこれを機にどうですか。ちなみに私は3回登っています。

11月7日 築地市場が移転、江東区豊洲新市場が開場
 正式名称は「東京都中央卸売市場 豊洲市場」です。以前、板前をしていた私は毎日のように朝6時に築地市場へ仕入れに行っていました。その築地市場がなくなってしまうのは寂しく思いますが、日本の台所が新しくなるのは非常に楽しみです。また豊洲市場ならではの新しいグルメが生まれることを期待します。

11月 アメリカ大統領選挙
 大統領を2期務めたオバマ氏は出馬できないため、民主党候補は熾烈な争いを繰り広げ、共和党は過激な発言をするトランプ氏など、候補者の選出にはまだまだ時間がかかりそうです。アメリカ大統領は影響力も大きいので、経済発展もそうですが、平和な世界を作っていける大統領が選ばれるといいですね。

 さて、今年の干支は申ですね。一説によると、申年は「猿のように暴れる経済状況になる」などといわれています。実際、今年はオリンピックやアメリカ大統領選など世界的重要なイベントがあり、経済状況は先が読めないような気がします。そこで、申のことわざで新年にふさわしい良い言葉はないか探したのですが、多くの人が猿に良いイメージを持っていないのか、なかなかいいものがありませんでした。しかし、「申」は人の力が加わると、「伸」という字になります。まさに業績を「伸ばす」にはうってつけの年です。また、確定「申」告の時期も近づいていますので、申告が必要な方はご準備もお願いします。最後になりますが、今年も温井会計事務所を宜しくお願い致します。

2015年ヒット商品ランキング

2015年ヒット商品ランキング

それいゆ通信084号

関与先の皆さま

 こんにちは。何かと気忙しい師走になりました。そのせいなのか、最近、通勤時間帯の電車の遅れが目立ち、忙しさに追い打ちがかけられているような気がします。また、師走といえば、忘年会シーズンですね。今年の冬は例年に比べ気温が低いとの予想もありますので、皆様、肝臓も含めて体調管理にお気を付けください。それでは、事務所通信平成28年1月号とそれいゆ通信084号、毎年恒例の一粒万倍日カレンダーをお届けします。

 今回の事務所通信は、「複式簿記の力~なぜ帳簿を付け仕訳をするのか~」と題して、複式簿記について世界的陶磁器メーカー「ウェッジウッド」の事例を用いてわかりやすく解説しています。ウェッジウッドの創業者がなぜ複式簿記を導入し、経営にどのように役立てたのか。過去の実績から将来予測、経営内容の把握と経営の意思決定まで、まさに当事務所でも理念として掲げている「会計で会社を強くする」の実現方法が書かれています。是非ご一読いただき、本年を振り返ると共に、来年からの経営にお役立てください。
また、当事務所からもマイナンバー収集・管理についてご案内をしておりますが、改めて「マイナンバーの取り扱い」についてもご確認お願いします。ご不明点につきましては、遠慮なくお問い合わせください。

 今回のそれいゆ通信では、来年のステップアップの足掛かりとするために、この時期恒例ですが、2015年のヒット商品をランキング形式で振り返ってみたいと思います。皆様はいくつご存じでしょうか。
 消費税増税は先送りになりましたが、税分野では、相続税・ふるさと納税、大混乱を招いているマイナンバー制度、さまざまな議論を呼んだ安保法制など、注目の制度改革が多数あった2015年。また、海外からの評価だけではなく、我々自身も日本の良さ、それを再発見した年ともいわれています。まさに、1位「北陸新幹線」は「日本の美の再発見」を、3位「インバウンド消費」は「日本の良さ」を表しているのではないでしょうか。本当に日本は外国人であふれていましたね。4位「コンビニドーナツ」は残業のお供、7位「チョイ呑み」は残業後のお供として個人的には大活躍でした。残念ながらランク外でしたが、高校時代ラグビーをしていた私は、日本代表のw杯の活躍でラグビーのマイナースポーツ脱却に期待したいと思います。ガンバレ!桜ジャパン!!

 さて、職員:温井智久が本年のそれいゆ通信をすべて担当いたしましたがいかがだったでしょうか。監査等でお会いできましたら是非感想をお聞かせください。また、お風邪など召されぬよう、お気をつけて年末年始をお過ごしください。それでは、よいお年を!

インボイスってなんだろう?

インボイスってなんだろう?

それいゆ通信083号

関与先の皆さま

 
 こんにちは。日足がめっきり短くなり、冬将軍がもうそこまで来ていると感じるようになりました。皆様お変わりありませんか。当事務所では、10月中にはマイナンバーが送付される予定と告知してきましたが、今のところ関与先様でマイナンバーが届いた役・社員がいるという報告はありません。しかし、行政は11月末までには配布を終える予定とのことですので、今月はより一層の注意喚起をお願いします。それでは、事務所通信平成27年12月号とともにそれいゆ通信083号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「今年の経営を振り返る」と題して、売上と利益の中身の点検を提案しています。売上の中身を取引先別、商品(製品)別にチェックするなどのほか、営業担当者別、部門別、営業所別など、細かく分けることで、これまで気付かなかった(見えなかった)変化や実態がわかることがあります。それをヒントに、売り上げの改善に向けた検討をするためのチェックリストが掲載されています。是非ご活用ください。
また、マイナンバー制度における個人番号カードの取得方法、利用できるサービスについての記載もありますので併せてご一読ください。

 今回のそれいゆ通信は、消費税の軽減税率に向けて採用を検討している「インボイス」について説明します。インボイスとは、物を売ったり買ったりする取引で、企業や小売店などが記入する書類のことで、税額票とも呼ばれます。書式は請求書に近いのですが、品目ごとに消費税の税率や税額を事業者番号や請求書番号などとともに記す点で異なります。一部では経理事務の負担が増えるという理由で反対の声もありますが、なぜ政府はインボイスの導入を検討しているのでしょうか。それは、消費税の軽減税率を導入にあたり、国に納めるべき消費税が事業者の手元に残って利益となる「益税」が問題視されているからです。
益税とは、消費者から預かった税金を国庫に納入することなく、事業者の利益とすることをいいます。では、どういう場合に益税が生じるのでしょうか。その理由は2つあります。1つは、中小・零細企業の経理事務の負担を軽くする「事業者免税点制度」が適用されるケースが挙げられます。これは、消費税を納税しなくてもいい制度で、課税対象となる年間売上高が1000万円以下の小規模事業者が利用できます。もう1つは、「簡易課税制度」が適用される事業者です。年間の課税売上高が5000万円以下だと選択が可能で、面倒な経理事務を省き、売上高から推計で納めるべき消費税額が決まります。この制度の肝は、実際の仕入額とは関係なく、あらかじめ定められた「みなし仕入率」を売上高にかけた額を仕入額とみなし、消費税額を算出することです。このみなし仕入率は政府が決めており、業種ごとに分かれています。しかし、みなし仕入率は実際の仕入率よりも甘く設定されているケースが多く、益税につながっているようです。
益税は、消費税が10%に引き上げられるとますます膨らむといわれています。そこで、インボイスを採用すれば、事業者はインボイスに基づき、支払った税額と受け取った税額の差額を納税するので、益税は発生しにくくなります。つまり、政府はインボイスによる益税の抑制策をしようとしているのです。また、インボイスには発注元の企業から支払われる代金に、増税分が上乗せされているかどうかが確認しやすいという利点もあります。現在は、多くの事業者が会計ソフトを使って経理事務を行っているので、事務負担の増加を理由としてインボイスを反対するのではなく、取引が透明化されることの警戒感が反対の理由といわれています。念のため、当事務所の関与先様におかれては、何ら警戒する必要はないので、ご心配なく。

 毎月の繰り返しになりますが、11月末には世帯ごとに簡易書留で「通知カード」が届きます。従業員に紛失しないよう注意喚起をお願いします。また、「平成28年分の扶養控除等(異動)申告書」の提出の際に、従業員の本人確認と、従業員本人とその扶養家族のマイナンバーを扶養控除等申告書に記載してもらうことになりますので、その点の注意喚起も併せてお願いします。(T.N記)

軽減税率制度ってどんな制度?

軽減税率制度ってどんな制度?

それいゆ通信082号

関与先の皆さま

 こんにちは。だんだんと涼しくなり、先日まで青々としていた当事務所前の桜並木も黄色い葉が目立つようになりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。ご存じのとおり、いよいよ今月、マイナンバー制度における「通知カード」が郵送配布されます。通知カードは、10月5日現在の住民票の住所地に簡易書留で郵送されますので、番号収集へ向けて従業員への周知をお願いします。それでは、事務所通信平成27年11月号とともにそれいゆ通信082号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「保険料控除申告書を作成するための生命保険料控除記載の注意点」を取り上げています。年末調整により生命保険控除を受けるには、10月下旬頃に保険会社等から各従業員に届いた「保険料控除証明書等」の「原本」が必要です。保険料控除証明書等を紛失しないよう従業員への注意喚起をお願いします。さらに、生命保険の種類と新旧区分、保険金等の受取人の氏名や続柄などの記載、正確な控除額(1年分の控除額)の計算について注意点がありますのでご一読ください。
また、マイナンバーの記載が必要となる「扶養控除等(異動)申告書」についての記載もありますので、併せてご一読ください。

 今回のそれいゆ通信は、先月初旬にマイナンバーカードと結びつけて還付すると話題になり、結局取りやめになった迷走中の「軽減税率制度」を取り上げます。そもそも軽減税率制度とは、消費税率が8%から10%に引き上げられた際に消費者の負担増を抑えるためのもので、特定の物(生活必需品)やサービスに限って、標準より低い税率を課す仕組みです。同じ税目でも税率が複数あるので、複数税率制度とも呼ばれています。給与などに課される所得税は、所得の水準に応じて税率が定められています。これに対し、消費税は所得にかかわらず、同じ金額の物を買ったり、サービスを受けたりすれば、誰もが同じ税額を負担しなければなりません。つまり消費税率が上がると、所得が低い人は生活が厳しくなるわけです。贅沢品を買うのは我慢できても、食料品など毎日の暮らしに必要な物を買い控えることはなかなか難しいですよね。さらに、所得が低い人は、生活必需品の支出の割合が高い傾向があり、増税の負担はより重く圧し掛かっていきます。こうした問題の改善策として世界で広く採用されているのが軽減税率制度です。
 例えば、毎月5万円、年間60万円の飲食料品を購入する世帯では、消費税率10%なら税額は年間6万円に上りますが、8%の軽減税率が適用されたとすると4万8000円に下がり、差し引き1万2000円の負担軽減になります。これまで消費税率が引き上げられるたびに人々の財布の紐が固くなり、景気は悪くなっていきました。消費が振るわなければ企業の業績は悪化し、賃金が減って税収も落ち込むという悪循環に陥りかねません。生活に必要な物の消費税率が軽減されると、人々は安心でき、消費の落ち込みを防ぐ効果が期待できるというわけです。
 そうなると次は、対象品目をどうするかが問題となります。これは全てが政治にかかっているといっても過言ではありません。今のところは「酒類を除いた飲食料品」が軽減税率の対象となりそうですが、世界各国では、食料品、公共交通機関の運賃、子供服、医薬品、新聞・書籍など活字文化の媒体、美術館や動物園の入場料など、単に生活必需品だけでなく、文化の保護などの目的にも活用され、幅広い分野に及んでいます。この点は、今後の議論が待たれるところです。

 繰り返しになりますが、10月中旬には世帯ごとに簡易書留で「通知カード」が届きます。個人番号カード(マイナンバーカード)と違い、紙のカードですので、従業員に紛失しないよう注意喚起をお願いします。また、「平成28年分の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう場合に、従業員の本人確認と、従業員本人とその扶養家族のマイナンバーを扶養控除等申告書に記載してもらうことになりますので、その点の注意喚起も併せてお願いします。(T.N記)

マイナンバーで生活はどのように変わるのか

マイナンバーで生活はどのように変わるのか

それいゆ通信081号

関与先の皆さま

 こんにちは。9月に入り、暑さも少しは和らいできましたね。ただ、雨の日も多く不安定な天気が続いています。夏の疲れが出るころでもありますので、体調管理にお気を付け下さい。また、9月は関東大震災があった月であることから、各所で防災訓練が行われています。大阪府では大規模な防災訓練が行われ、東京では防災ブック「東京防災」が配布されました。皆様もこれを機に防災について考え直してみませんか。それでは、事務所通信平成27年10月号とともにそれいゆ通信081号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「会社と社長の金銭取引」について取り上げています。仮払金などは、本来の科目に振り替えるまでの一時的な勘定科目で、本来は月末までに清算しなければなりません。清算できなかったとしても、通常、決算時には残高はないか、あるいはあっても少額であるはずのものです。長期にわたって多額の仮払金が清算されずに残っている場合、税務調査において経理処理がずさんであるとの印象を調査官に与えてしまいますので、ご注意ください。

 今回のそれいゆ通信は、今までのそれいゆ通信で取り上げていた企業の安全管理措置ではなく、今月3日にマイナンバーの利用範囲を金融分野などに広げる改正法も成立したことを受けて、「2016年1月からスタートするマイナンバーで私たちの生活はどのように変わるのか」をご説明します。そもそもマイナンバー制度は、事務の効率化や税・社会保険料の徴収強化、様々な行政手続きの簡略化を進め、暮らしを便利にする狙いがあります。おさらいになりますが、12桁の番号(マイナンバー)は2015年10月5日に決まり、住民票に記載された住所にマイナンバーを記載した「通知カード」が家族の人数分、簡易書留で送られてきます。マイナンバーは原則として生涯変わりません。通知カードとは別に、マイナンバーを記した「個人番号カード」の発行を申請することができます。そしてその個人番号カードには、表面に顔写真と氏名、住所、生年月日、性別、裏面にマイナンバーが記載されます。これは運転免許証やパスポートと同様に公的な身分証明書として使うことができます。自治体によっては公立図書館の貸し出しに利用できたり、コンビニエンスストアでの住民票の取得に使えたりします。一方、生活の様々な場面で番号の提示を求められます。まず、正社員、アルバイト、パートにかかわらず、勤務先にマイナンバーを伝えなければなりません。確定申告、失業手当、児童手当、日本学生支援機構の奨学金の申請にもマイナンバーは必要になります。また、新たな証券口座の開設や、100万円を超える死亡保険金の受取のときにも金融機関にマイナンバーを提示する必要があります。

 次は、行政の仕組みについてご説明します。国の機関は2017年1月にネットワークでつながり、同年7月には市区町村もネットワークに加わります。各機関が管理する個人情報がマイナンバーで結びつけられると、失業手当の申請や児童手当の申請など多くの行政手続きが個人番号カードで済ませられるようになります。また同時に、インターネットサイト「マイナポータル」が利用できるようになります。これは、自分のマイナンバーがいつ、どのように使われたか確認できるほか、確定申告の手続きを簡素化するなどのサービスが検討されています。さらに、預金口座番号とマイナンバーを結びつける仕組みが2018年1月に始まります。これは、別々の金融機関に預けられた資産を把握しやすくして、課税逃れや不正受給などを防ぐ狙いがあります。ただし、口座番号を結びつけるには預金者の同意が必要とされています。政府は、預金口座番号とマイナンバーの結びつきを義務化したいようですが、資産が「ガラス張り」になってしまうことに対する国民の理解を得るのは難しいだろうとの見方が多数です。

 なお、日本年金機構の個人情報流出問題を受けて、基礎年金番号とマイナンバーの結びつけについては予定されていた2016年1月からの運用が延期されることになりました。さすがにこの部分は、強引に成立させなかったようですね。

 さて、皆様ご存じのとおり、当事務所では9月14日、10月7日にマイナンバー研修会を行います。是非この機会にマイナンバーの仕組みを理解し、マイナンバー施行に備えましょう!また、皆様と会場でお会いできるのを楽しみにしています。 (T.N記)

マイナンバー取り扱いにおける社内周知

マイナンバー取り扱いにおける社内周知

それいゆ通信080号

関与先の皆さま

 こんにちは。日中の暑さが引かず寝苦しい夜が続いていますが、皆様はいかがお過ごしですか。先日、ビール好きの私は、ドイツビールの祭典「オクトーバーフェスト」に行って来ました。本来、オクトーバーフェストというのは10月頃のビールの新酒を祝うドイツのお祭りですが、ここ数年春から秋にかけて日本各地でも行われており、大変な賑わいを見せています。本場ドイツからの輸入ビールということもあって1杯の値段が少し高めですが、本場ドイツの楽団がステージで演奏をし、皆で歌ったり踊ったりして楽しかったです。皆様も暑気払いにいかがですか。ちなみに私のお勧めビールは、小麦で作られた「ヴァイスビア(白ビール)」です。それでは、事務所通信平成27年9月号とともにそれいゆ通信080号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「調査実績から見た相続税申告の注意点」について取り上げています。指摘されることが多い点として、名義預金や名義株、海外資産があります。平成25事務年度における相続税の実地調査件数は11,909件で、このうち申告漏れ等の非違(非法・違法)があった件数は9,809件でした。つまり、実地調査したうちの8割以上に申告漏れ等の非違行為があったことになります。そして、追徴税額(加算税も含む)は実地調査1件当たりで452万円となっています。平成27年1月から相続税の基礎控除が縮小され、相続税が課税される人の増加が見込まれていますので、申告漏れがないようにするために注意点をご一読ください。

 今回のそれいゆ通信では、事務所通信でも取り上げられている「マイナンバーの取り扱いの社内周知」を説明します。一時期よりもマイナンバーが認知されてきたとはいえ、まだまだ対応・対策について不安に思っている方も多いと思います。そこで、今月は「会社として用意すべきこと」を説明します(「従業員へ説明すべきこと」は、従業員配布用として別紙を次号のそれいゆ通信とともにお送りします)。
会社として用意すべきこととして、事務所通信の中に取り上げられているものの中で、特に重要なことは、

①マイナンバーの取扱担当者を決定し、管理責任者に報告する体制を整える。
→取扱担当者と管理責任者を別々にし、ダブルチェック体制にすることが望ましい。また、業務日誌やマイナンバー記録簿を作成し、必ず記録に残すこと。

⑦業務システムはパスワードを設定すること。
→業務システムに限らず、PCや、データを持ち運ぶ際のファイルやUSBにもパスワードを設定すること。

⑧インターネットに接続されている場合は、ウィルス対策ソフトを導入し、常に最新にしておくこと。
→インターネットに接続されていないPCを利用するということでも漏えいは防ぐことができます。

⑪マイナンバーが記載された書面、入力されたデータの廃棄方法の決定。
→これも①同様、ダブルチェック体制と記録に残すこと。

 今回、別紙で「自社のマイナンバー対応実行チェックリスト」を用意しました。事務所通信のチェックリストよりもチェック項目が多いですが、従業員への説明も含めて10月末までには全ての対応をしていただきたいと思います。また、不明点があればご相談ください。

 冒頭でビールの話をしましたが、こうも暑いと休日等で気温の高い昼間にキンキンに冷えたビールを飲みたいと思う方は多いと思います。しかし、気温の高い日中にビールを飲むと、アルコールによる体温の上昇とそれに伴う発汗で、熱中症の危険があります。東京都心では本日時点で6日連続の猛暑日を記録し、この1週間で熱中症により搬送された人は1万人を超えているそうなので、屋外に限らず屋内でもなるべく涼しいところで、こまめに水分補給をして、夏に負けない体調管理をしてくださいね!(T.N記)

損害保険の話

損害保険の話

それいゆ通信079号

関与先の皆さま

 こんにちは。今年は九州や西日本で豪雨が続き、また、口永良部島が噴火し、箱根、浅間山などは噴火警戒レベルが上昇しています。今、日本ではいったい何が起こっているのでしょうか。しかし、嬉しいニュースもあります。6月26日の報道によると、企業業績回復で2014年度の国税収が21年ぶりの高水準になったそうです。実に4兆円近い上方修正です。さらに、日銀企業短期経済観測調査(短観)で、景況感を示す業況判断指数が製造業、非製造業共に上昇したそうです。下半期は中小企業も恩恵を受けられるかもしれませんね。それでは、事務所通信平成27年8月号とともにそれいゆ通信079号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「120年ぶりの民法大改正」について取り上げています。民法が制定されたのは明治29年(1896年)で、その間細かな改正はありましたが、大幅な改正は今回が初めてです。改正の目的は、読みやすくわかりやすい条文にすることと、時代の変化に対応することです。短期消滅時効の廃止や法定利率の引下げ、個人保証の制限などは中小企業にも大きな影響があるので是非ご確認ください。 ※ 改正民法は、平成30年からの施行になります。

 今回のそれいゆ通信では、損害保険の話をしたいと思います。損害保険というと、地震や火災、自動車など、陸上のものを思い浮かべますよね?しかし、損害保険のルーツは海上、「船」です。損害保険の歴史は意外と古く、古代ギリシャ時代、海上輸送で嵐や海賊など予期せぬ危険に遭遇した場合に、損害を荷主と船主で負担するという習慣から始まりました。日本では、16~17世紀に活躍した朱印船で損害保険の考え方が誕生しました。今回、損害保険を取り上げようと思ったのは、マイナンバーを対象にした企業向けの保険が損保ジャパン日本興亜から発売されることになったからです。それいゆ通信や別紙でもお伝えしているように、マイナンバー制度が平成28年1月からスタートします。しかし、ご存じのとおり、日本年金機構や協会けんぽの情報漏えい事件がありました。そこで自社のマイナンバーに対する体制について不安視する企業や不測のサイバー攻撃のためにこの保険が登場しました。補償の対象は、不正なアクセスやウイルス送付などのサイバー攻撃で外部に流出した際に発生するシステム改修費や損害賠償などの訴訟費用のほか、マイナンバーを悪用された社員らの被害なども含まれるそうです。と、真面目に損害保険の話だけをしていると面白くないので、もうすぐ始まる夏季休暇に向けて活用できそうなちょっとユニークな保険の話をしたいと思います。
 楽しみにしていたコンサートを急用でキャンセルしなければならなくなった、旅行先で雨に降られたなど、不測のトラブルが発生することってありますよね。そんなとき、不測のトラブルによる損害を補償してくれる保険をご存知ですか?

 チケットガード(チケットガード少額短期保険) … 病気やけが、宿泊を伴う急な出張などでイベントに行けなかったときに、チケット代金を補償してくれる保険。チケットぴあのウェブサイトを通じて購入したチケットが対象で、保険料はチケット代の10%前後。購入日から7日以内の申し込みが必要。当日、会場に向かう公共交通機関が運休・欠航または2時間以上遅れたり、親の介護などで観覧できなかったりした場合も保険金が下りる。利用者は、仕事が忙しく、高齢の親や小さい子供を持つ比率が高い40~50歳代が多いそうです。

 お天気保険(ジャパン少額短期保険) … 降雨量やアメダスのデータによって宿泊代が返金となる保険。国内旅行はベストリザーブかHIS、海外旅行はHISが対象となる。ベストリザーブの場合、宿泊代金の10%が保険料。宿泊日の午後3~6時の間に1時間当たり0.5ミリ以上の雨が降り続けば1日分の宿泊代が全額返金。HISの場合は、アメダスのデータを使い、雨の降る時間の長さと保険料に応じて返金額が変わる。

 一日自動車保険「ちょいのり」(東京海上日動火災保険) … 親や知人などから借りた車を運転する際に加入できる1日単位の自動車保険。携帯電話からの申し込みができる。保険料は1日500円~。

 最近はゲリラ豪雨などの異常気象も多いですし、これから台風シーズンです。夏季休暇を取られる方はお気を付け下さいね!

長寿企業の秘訣

長寿企業の秘訣

それいゆ通信078号

関与先の皆さま

 こんにちは。先月は夏が来たような天気の日が多かったですね。5月の月間平均気温は明治9年から140年間の観測史上、一番暑かったそうです。しかし、それもひと段落して、そろそろジメジメとした梅雨の季節がやってきそうです。気温が上がり、湿度が増えるとダニやカビの繁殖の原因になります。雨が降っているとなかなか難しいかもしれませんが、1日1回は窓を開けて外気を取り込むと、室内の空気も清潔に保たれるそうです。会社も部屋もよい空気を取り入れ、カラッと爽やかに2015年上半期最後のひと月を乗り切っていきましょう。それでは、事務所通信平成27年6月号とともにそれいゆ通信078号をお届けします。

 今回の事務所通信は、「小規模事業者の現状と未来」と題しまして、中小企業庁がまとめた「2015年版小規模企業白書」での考察をまとめています。その中で注目すべき点は、「経営計画を作成することで、自社の経営に向き合おうとする意識が強くなり、前向きな経営意識が生まれる」というところです。小規模事業者に限らず中小企業にとって、先の見通しを立てる経営計画というものは必須であり、これは当事務所でも推進している経営改善計画策定事業に通じるものがあります。その他、経営計画策定ツール(継続MAS)もご用意しておりますので、お気軽にご相談ください。これを機に経営計画を策定して、持続的発展をする企業へとステップアップしていきましょう!

 また、マイナンバー制度の概要、スケジュールについての掲載もあります。以前のお知らせと重複しますが、再度ご確認をお願いします。

 今回のそれいゆ通信では、長寿企業の秘訣について触れてみたいと思います。「長寿企業」とは、創業から100年以上を経過した企業をいい、帝国データバンクによると日本では約26,000社あります。規模別に見ると、約6割が「従業員10人未満」、約8割が「年商10億円未満」の比較的小規模な企業の割合が多いそうです。そう聞くと、創業当時から変わることなく伝統を守り続けてきた企業というようなイメージが湧きませんか?しかし、東京商工会議所の調査によると、100年以上存続してきた最大の要因として、7割超の企業が創業当時の製品・サービスなどを「改善・改良した」と回答し、「変えずに守り続けた」と回答した企業は1割にも満たなかったそうです。これはいったい何を意味するのでしょうか?

 長寿企業に対して、「何を改善・改良したのか」と回答を求めると、一番の理由は「販売先・顧客」が変わった、その次が「仕入れ先・原料調達先」が変わったと回答しました。当然、自社が100年以上続いていたとしても販売先・仕入れ先企業が100年続くとは限りませんし、顧客が個人であれば100年以上生きている人は稀でしょう。逆に、「変えずに守り続けてきた」と回答した企業は、創業時から先代までの間は「信用第一・コンプライアンス重視」、当代の就任後では「社名・屋号」との回答が多かったそうです。確かに、小規模事業者であれば、信用第一は頷けますし、ましてや社名・屋号がコロコロと変わってしまっては取引先・顧客が混乱してしまいかねません。「改善・改良した」長寿企業と、「変えずに守り続けてきた」長寿企業。両極端のように思えますが、実は共通している部分もあります。それは、「創業以来の稼業のコア部分を頑固に守りぬいている」というところです。長寿企業として最も多い業種が、清酒製造業です。清酒製造業が多い理由は、産業として定着した歴史が古いこと、参入障壁が高いために新規参入が比較的少なく、安定した経営を続けやすかったことが挙げられますが、やはり、創業以来の稼業のコア部分、清酒製造を頑固に守りぬいているということが一番大きな理由だと思います。

 さらに長寿企業は、「変化に対して積極的であり、柔軟に対応する」という企業が多いという調査結果もあります。これらを踏まえると、「稼業のコア部分と信用第一の姿勢は守りつつ、時代の変化・ニーズに合わせて積極的かつ柔軟に対応できる」企業であることが、長寿企業の秘訣なのかもしれません。日本最古の企業は、聖徳太子の時代から存在する金剛組(株式会社 金剛組)で、これは世界最古の企業でもあります。その金剛組を含め日本には1000年以上存続する企業は7社あります。1000年とは非現実的な気もしますが、千里の道も一歩から。まずは1年、3年、5年先の経営計画策定から一緒に取り組んでいきましょう!